栽培のポイント

アボカド栽培に適した土壌と根の発生

アボカドの根は、主根が数本に分かれて横に伸び、側根として発生していきます。その側根からは、さらに多くの細根が伸び、養分を吸収しています。そのため、これらの根は比較的浅いところに存在し、養分をしっかり吸収しなければならない細根は、地表から20cm以内のさらに浅いところに位置しています。

アボカドの根は大量の酸素を必要とするため、水はけの悪い土地や植木鉢では酸欠状態に陥る危険性があります。そのため、地植する場合には雨水が停滞しにくい傾斜面での栽培が適しています。鉢植えでも、排水性と通気性に気を付けないと、アボカドの最大の敵であるフィトフトラシナモミ(Phytophthora cinnamomi )というカビによって、根腐れを起こしてしまうことがあります。

しかし、排水性の良い環境を整えると言いましても、梅雨明けから夏場の乾燥しやすい時期には注意が必要です。この時期にかん水を怠り、葉を枯らしてしまうと回復困難な状況になりかねません。また、地表付近には太めの白い根を増やしていくことが望ましく、マルチや敷草などで覆ってあげると乾燥しにくい状態になります。

つまり、アボカドの根は浅いので排水性と通気性の良い土壌を使い、夏場は乾燥させないようにうまくかん水しながら白い根を増やせと言うことらしいです。



春枝、夏枝とよばれる新梢の生長

アボカドの樹は、開花期の5〜6月に花房の中心部から春枝と呼ばれる新梢(木の幹や枝の先)をつくり、この新梢につく葉が果実の生産に重要となります。しかし、新梢と果実の間で栄養の取り合いが起こってしまうため、新梢の発育が盛んな場合は、摘芯を行い枝の数を増やして果実の生理落下を防ぎます。この春枝は、6月には硬化して緑色となり栄養を十分に蓄えられるようになります。

7月中旬以降、果実のなっていない春枝の先端部からは、夏枝と呼ばれる新梢が発生します。この新梢(夏枝)は、1ヵ月後には硬化して光合成を盛んに行い果実の肥大に活躍するようになります。ちなみに、着果した春枝の先端には夏枝は出てきません。

夏枝の生長が旺盛になったり、あらぬ方向へ伸長していった場合は、切り返しや剪定を行わなければなりません。その際、9月中旬以降、再び先端部から新梢が発生するようなときは、硬化する前に先端部を摘芯し、側枝を増やして樹冠を横方向へ拡大していった方がよいでしょう。この夏枝(7月中旬〜9月中旬)は、樹の形成に必要で、翌年の結果枝にもなるので、しっかり摘芯し枝数を増やし、葉の枚数も増やすようにします。



アボカドの葉の寿命と落葉

アボカドの葉の寿命は短い(10〜12ヵ月)と言われていますが、ここ日本では冬の低温によって葉が落葉してしまうため、さらに短くなります。冬季には、5〜6月に発芽した春葉も、7〜8月に発芽した夏葉も落葉することがあります。また、このときだけでなく、春先の花芽の時期にも葉の養分を花芽に吸い取られてしまうため落葉します。そのため、開花と新梢の伸長が重なる5〜6月には古い葉がほとんど落葉してしまうことになります。

しかし、このように栄養の授受によって落葉してしまうことは好ましいことではありません。なぜなら、開花時に古い葉がある程度残って光合成を行っていないと、結実後に生理落下してしまうからです。また、冬季に寒害を受けないように夏葉に十分な栄養を蓄えさせておくことも重要です。



アボカド(雌雄異熟花)の開花から受精まで

アボカドは花がつく果樹のなかでも特徴的な開花の仕方をします。まず、花芽は前の年に発生した枝の先端につき、晩秋には芽の内部に花芽ができていることから春先には丸みを帯びてきます(葉芽は尖っているため違いが分かる)。3月頃から花芽の生長が早くなり、4月には花房になります。花房は5〜6月に開花のピークを迎え、たくさんある小花がつぎつぎに開花していきます。

アボカドの花房には、新梢をともなう「有葉花房」と新梢をともなわない「無葉花房(直花)」があります。樹の勢いが弱まってくると無葉花房が多くなり、そのような樹ではたとえ結実しても果実を養う葉がないため生理落下し、さらに樹が弱くなってしまいます。

花は両性花で、雌ずいと雄ずいの成熟期間が異なる雌雄異熟花と呼ばれています。この両ずいの活動時期の違いから「Aタイプ」と「Bタイプ」に品種を分けています。「Aタイプ」は、午前中に開花してまず雌ずいが受精状態に入り、午後にいったん花弁を閉じ、翌日の午後に再び開花して雄ずいから花粉が放出されます。「Bタイプ」は、午後に開花して同様に雌ずいが受精状態に入り、夕方に花弁を閉じて翌朝再び開花して雄ずいから花粉が放出されます。

このように両タイプの活動時期が異なるため、タイプの異なる品種を混植することにより、受粉が行われる期間が長くなって、実のなる確率が高くなります。とは言うものの、アボカドの花は雌雄異熟のため自分で受粉することができません。そのため、ハチなどの昆虫による媒介が必要になります。しかし、アボカドは一万花分の一果と言われるように0.01%の確率と非常に低い結果率の果樹なのです。(実はミツバチがアボカドの花よりも柑橘系の花の方が好みらしい...)



アボカドを美味しく食べるために...

アボカドの果実は、樹にぶら下がっているかぎり肥大し続け、軟化することはありません。その理由は、果梗部に果実の追熟を阻害する植物ホルモンがあるからです。よって、果実を濃厚な味にするためには、樹にぶら下げたまま油分を蓄えさせる必要があります。アボカドは他の果物とは違い、糖やでんぷんを蓄えることができず、水分と油分だけを果実中に蓄えます。果実は肥大し続けると水分が減少し油分が増えていくので、未熟な果実を早い段階で収穫してしまうと、あの水くさい味になってしまうというわけです。

アボカドの果実は収穫後、室温で追熟させ柔らかくして食べます。25℃前後で1週間ほどかけて追熟させるとちょうど良いそうです。早く食べたいときはリンゴなどと一緒にしておくと早く軟化しますが、ムラができたり変な匂いを発したりするので注意が必要です。